カナside
私、カナこと、叶野芽生(かなのめい)は超平凡なピッチピチの高校1年生。
ただ…身長がめちゃめちゃ低い。
今だ150cm。
まだ小学生扱いを受ける…
そんな私には幼馴染がいる。
キミくんこと、前原君也(まえばらきみや)
小学生の頃から野球をしてて、中学で部活に入るなり、さっそくレギュラー。
カッコよくて頭も良い。
身長が180cmあるから、たまにバカにされてムカつくけど…
でも私は、そんなキミくんが好き。
幼稚園の頃からずっと。
キミくんしか見てこなかった。
でも、気持ちを伝えることなんてできない。
ううん、伝えちゃダメなんだ。
『この関係が壊れてしまいそうで…怖い。』
「カナ。カーナ。おーい、カナちゃん?」
私の部屋の窓が、ガラガラっと開き、カーテンがシャッと音を立てたと同時に陽の光が私を照らす。
キミくんだ。
んー…眩しい。眠い。寝たい。
私は足元まで下がっていた布団をかぶり二度寝をする。
「おい、起きろチビ。遅刻すんぞ」
キミくんが必死に私の体を揺すり、布団を脱がそうとする。
「やーだー。寝たいー。」
私も必死に布団を引っ張る。
ビリっ
「「あ。」」
私の布団が…
お気に入りのイチゴの布団が…
「キミくんのバカぁーっ‼︎」
私は近くにあった物を手当たり次第、キミくんに投げつけた。
「おまっ…ちょ、やめろって!」
キミくんは必死に抵抗した。
その後、お母さんに呼ばれ一時休戦。
登校時、キミくんの顔に絆創膏が貼られていたのは言うまでもない。
私とキミくんは、毎日おんなじ朝を繰り返している。
それは小学1年生の頃から変わらない。
私たちの家は一軒家で、お隣さん。
2階にお互いの部屋があり、ベランダから行き来できる。
キミくんは、朝が弱い私を毎朝起こしに来てくれる。
365日、一度も忘れた事はない。
そして必ず一緒に登校する。
でも、今日は隣にいたくない。
距離感約小1一人分。
「なぁカナ。ごめんって。そろそろ許してくれてもいいだろ?」
やだ…絶対許さない。
「俺が悪かったって。な?俺、お前とこんな離れて歩くの嫌なんだけど…」
そんな言い方しないでよ…
許さざる負えないじゃん。
少しずつキミくんに近付く。
ゆっくり、ゆっくりと。
「カナ?」
もぉ、そんな顔しないでってば…
「ゆ、許すから。」
キミくんは、にこーって嬉しそうに笑って、よしよしって私の頭をポンポンした。
もぉ、キミくんには勝てないよ。
キミside
ピピピピ…
ん…、目覚ましが鳴ってる。
「もう朝か…よし、起こしにいってやるか」
俺は体を起こし、制服に着替えてから荷物を持った。
ガラガラー…シャッ
相変わらず可愛い寝顔だなー…
「カナ。カーナ。おーい、カナちゃん?」
カナは窓から差し込む光が眩しかったのか、ぎゅっと目を瞑った。
「おい、起きろチビ。遅刻すんぞ。」
「やーだ。寝たいー。」
そんな可愛い声でおねだりすんなよ。
眠いのは俺も同じだっつーの…
二度寝しようとするカナの布団を引っ張った。
ビリっ
やべ…っ
「キミくんのバカぁーっ‼︎」
カナは、目覚まし時計、携帯、ティッシュ、ぬいぐるみ、近くにある物全部を俺に投げつけた。
その後、カナのお母さんのお陰で助かったが…
飛んできた目覚まし時計が左頬に擦れて少し切れてしまった。
俺はカナのお母さんに絆創膏をもらって、カナと一緒に家を出た。
でも…相変わらずカナは拗ねたまま。
いい加減、機嫌直せよ…
「なぁカナ。ごめんって。そろそろ許してくれてもいいだろ?」
頼むよ…
「俺が悪かったって。な?俺、お前とこんな離れて歩くの嫌んだけど…」
カナは少しためらって、俺に近付いてきた。
「カナ?」
「ゆ、許すから。」
お、やっと機嫌直った!
俺はカナの頭を優しくポンポンしてやる。
俺より30cm低いカナの頭は丁度いい高さにある。
カナの頬が、少しピンク色になったのがわかった。
学校に付き、クラス名簿を見る。
前にはたくさんの生徒が群がっている。
「ったく…邪魔だな。」
隣のカナを見ると、んーっんーっと背伸びをしてる。
その必死な姿がまたたまらなく可愛い。
「まったく…俺が見てやっから。」
「うん…っ」
えーと…男子列…
あ、あった。
俺はC組か。カナはー…
「あった。」
まぢかよ…
「な、なに⁈もしかして…違うクラスだった⁇」
「ううん、同じクラス!」
やべぇ…超嬉しい。
「やったー‼︎」
カナも、俺の手を掴んでピョンピョン跳ねた。
校内に入ったカナは、でへへーって顔を歪ませた。
俺も、嬉しさを抑えきれなかった。