尾行して、勘違いして首を突っ込んで、それから私の帰りを待つようになって。あったことがないからストーカーの傾向なんて判らないけど、テレビで報道されるようなそれとは異なる気がする。


『私のこと……知ってるの?』
『多少はね』


どういう意味でだろう。いつどこで、私を知ったんだろう。


ポン、と軽快な音に顔を上げ、エレベーターから降りたところで数日分の郵便物に目を通す。考えても仕方ないことに答えを出そうとする思考を切り替えたかった。なのにうまくいかない。


もしかしたら司さんが頼んだ興信所の人かも。なんて、あんなに若いわけがない。だったら探偵やってますって言われたほうがまだ納得できる。

おかえりと声をかけてくる神経は全く理解できないけど――…。


綺麗な女の人に目を奪われた。


立ち止まり、息さえするのも忘れたのは何もそれだけが理由ではなかった。綺麗。誰だろう。何、これ。次々浮かぶ自分の声が頭に響いて、少しだけ端の歪んだ写真が、司さんの手から叩き落としたものであると理解したから。


――いっくんの、妹。


ぐしゃり。他の郵便物と一緒に3枚はあった写真を握り潰したときには、踵を返していた。


余計なことを……!


司さんは写真を拾わずに去った。私だって写真の存在なんて忘れていた。見ようとすらしなかった。


私は誰が生きて亡くなっているのかなんて、見たくもないのに。