そう言えば、前にもこんなことあったなぁ……。
「資料室に閉じ込められた時も、桐谷くんはあたしのことをこんな風になだめてくれたよね。
あれ、すごく安心したなぁ……」
「あー、あったね。そんなこと」
今では、こうやって寄り添っても何も言われない。
ドキドキする反面、とても落ち着く、桐谷くんの温もり。
「あんたは無茶ばかりするから、ホント……目が離せない」
「……ふへへ。桐谷くんの視線を独り占めできるなんて、あたしは幸せ者ですね」
「バカだろ。俺は怒ってるんだよ。自分を大切にしないあんたに」
桐谷くんに咎められているというのに、小声でのやり取りがなんだかおもしろくて、つい笑みがこぼれてしまった。
みんなに内緒でコソコソしてるのって、バレるかバレないか、ホントにドキドキする。
あたしは密かに、それを楽しんでいた。