今まで無口だった長谷川くんが、小説にしおりを挟むと立ち上がり私の方へずんずんと歩いてきた。



 私の前に立つと、腕をぱしっと掴み引っ張る。思わず立ち上がる私。







「じゃ、俺らいちぬけな」







 咄嗟にバッグをつかむ。


 すぐに強く腕を引っ張られ、部屋の外へと連れていかれた。



 出るときに、周りの男の人たちや女の子たちの冷やかしの声が聞こえた。




 少しだけ恥ずかしくなった。懐かしい元カレのことを思い出す。




 ……嫌な記憶は、早く忘れよう。








 そのままずんずんと長谷川くんは進んで行き、カラオケから出て人通りの少ない道に行くとぱっと腕を離した。



 支えのなくなった私の腕がゆらゆらと揺れ元の位置に戻る。