「じゃ、行くか。手出せよ。エリカ様」
スマホ返してくれるのかな、なんて思った私が馬鹿だった。
長谷川君は私の手と自分の手を重ねた。
胸がどくんっと音をたてる。顔の周りが暑くなる。
「エリカ様じゃないです!」
「なーに。照れてんの?」
「そんなわけないでしょ!」
「全く。素直じゃないなー」
なんて。呆れられるかな、って思ったけれど、
長谷川くんは恥ずかしさを隠そうとする私を見て笑った。
また、胸がきゅってした。
「俺、チャリだけどお前は?」
「歩き」
「じゃあニケツ出来るな!」
長谷川君は駐輪場まで歩いて行くと、私の手を離し沢山の自転車たちの中に姿をくらませ、
1分もたたないうちに自転車を押して戻ってきた。