「い、や、ですよ!!」
「仕方ないですね。ではこれと交換でいかがでしょう?」
笑顔の彼の手には、私のスマホ。
なんでこいつ持ってんの!と思えば、そういえば机に入れてたんだった!
「そんなの卑怯よ!」
「なんのことだかわかりません」
「私のスマホ!!」
「見られて困るものでも入ってるんですか?」
あ……悪魔だ。この男。悪魔だ。
別に見られて困るものなんてないけれど、人に見られるのなんて気持ちがいいわけがない。
「わかったわよ!行けばいいんでしょ?行けば」
「最初っからそう言えばいいんだよ」
急に長谷川くんの口調が変わってぎょっとする私。
まわりを見ればもう教室には私たちしか残っていなかった。
「今から教室戻っから先玄関行っとけよ」
「スマホ、返してよ」
「玄関で返してやるよ」
1ヵ月前と同じように、ひらひらと手を振って長谷川くんは教室から出ていった。