「俺の彼女にしてやろっか?」
セットが終わった長谷川君は私の顎をくっと持ち上げた。
さっきまでの敬語とは違い、偉そげな口調の彼。
容姿といい、行動といい、本当に別人なんじゃないか、と思ってしまう。
目の前にいるのは、本当に小説ばかり読んでいためがねで地味な長谷川君なのだろうか。
顔、だけはいいことは認めてやる。
「や、あの。彼氏とか間に合ってるんで」
あまりに違いすぎる雰囲気に圧倒されていたが、我に戻って長谷川君から距離を置く。
「へえ、彼氏いるんだ」
やわらかに微笑んだ彼は、再び私との距離を縮める。
そっか。さっきの発言だと彼氏がいるって思われちゃうか……。
「いないですよ、彼氏なんか」
「じゃあ大人しく俺の女になれば?お前みたいな変わった奴久々にみたわ」