どれだけ時間がたったのだろうか。


月が天辺に登ろうとしていた。



「……もう、帰ろう」



私はブランコから降りて、歩いてこの場を去ろうとした。


「……おい、こんな時間になにしてんだ?」


不意に後ろから声をかけられたので、そろっと横目で確認するように首を横にひねる。

知り合いかもと思ったけど、全く知らない男。

いわゆるイケメンてやつだな。
白髪で、身長は180くらいか…。
スーツを着ていて、頬に傷がある。

よく見ればスーツもボロボロ。
森の中ででも、暴れたのか。


「おーい?シカトか?」


そしてチャラいタイプだな。
うん、絶対そうだ。
こういう時は逃げるべき。

私はポケットからハンカチを取り出し、彼に押し付けるようにして渡した。


「??」
「頬の傷から血がでているのでこれで拭いてくださいそれでは失礼します」
「え、は、お、おい!ちょっ!?」


私はできるだけ走って彼から逃げるように家に帰る。

ハンカチを渡したのは、ただの気まぐれだ。もう少しだけあの公園にいたかったから。

……いや、本当はあのハンカチを持っていたくなかったから。
丁度いいとおもったんだ。

他人でも傷をふければ、あれも本望だろうな。