桜夜先輩は顔色一つ変えず、まっすぐ私を見つめていた。
その眼差しに目を反らしたくなる。
それでも見続けた。
先輩に負けないよに、あの時の自分の意思を曲げないように。

しばらくして、折れたのは先輩の方だった。

「……今日は無理か…。」

ため息を吐きながら小さな声で呟いた。
その口調が変わってるのは気のせいではないはず。
私は先輩を見続ける。

「残念ですがまた後日寄せさせていただきますね?」
「2度と、来ないで下さい」
「嫌です」

強い意思を持った瞳で再び私を見つめて言った。
その瞳が一瞬だけ兄さんと被って見えた。
……あぁ、折角今日は3人で気分良くご飯を食べてたのに。
今は気分最悪だ。気持ち悪い、吐き気がする。
早く帰ってくれないかな。

「俺は何度だって来ますからね…っと、そうでした…」

先輩はブレザーのポケットをあさって何かを取り出した。

……もう、やめてクレ。

「ありがとうございました。このハンカチ、返しておきますね」

私はそれを受け取ろうとはしない。
その気持ちを読み取ったのか、先輩はハンカチをお弁当の側に置いてこの教室を去っていった。