それから、ずっと沈黙が続いた。

でも、それを破るように竜兄が来てくれた。

「希奈…。」

竜兄が私の名前を呼ぶと、お母さんが竜兄の方をみて、笑う。

お母さん、どうしたの?

「…竜黒君。前はごめんなさい。つい、かっとなってしまって。迷惑をかけたわ。」

「い、いえ。大丈夫です。」

「それとね。本当に私は、希奈と暮らしたいと思っているの。」

「それを決めるのは希奈自身ですよね。俺に言っても仕方ないと思います。」

竜兄はこの話、どう思ってるのかな。

真剣になって、話してくれてるのは嬉しいけど。

「じゃあ。希奈が私についてくるって言ったら、貴方はどうするの?」

お母さんは焦りながら聞く。

そこまでして、私がほしいのか。

「彼女が決めたことなら、仕方ないでしょ。でも、確かに希奈は貴方のところに行くべきかもしれません。」

竜兄は、私の頭に手をおいてそう言う。

すごく、優しい表情。

確かに、選ぶべきなのは私。

でも、もしも、竜兄といるっていったら、迷惑になるのかな。

こんなこと考えると、余計に嫌になるよ。

「そうよね。私といると、甘えられるものね。」

お母さんは、ホッとしてるのか、表情が明るくなった。