「それこそが、魔法少女なのだよ――りおん――」



「わたし、魔法少女になったんだね――ふふっ、魔法少女っていうか、適当魔法少女――りおんだねっ――」


喜びと悲しさ――感動と切なさ――各々の想いの繊維が織り込まれた、滑らかで繊細な生地の様な唇の動きと声色で、りおんは自らの存在を示した――。



「さて、りおん――魔法少女になった訳だが、ひとつだけ何でも願いが叶うとしたら、何を願う――」


ステッキさんが問う――。


「こりゃ、またまた定番だね――」




「でも、叶うなら――母親に――」


「りおんの家の事情は承知している――そうか、母親に逢いたいか――」




「殴る――」


「えっ――」


「わたし、母親の顔も愛情も知らない――お父さんは、わたしが生まれてすぐ病気で死んだって言ってるけど――」


「信じていないのか――」


「信じてるフリをしてるだけだよ――でもね、生きているんじゃないかって、何処かで――そう感じる――確証はないけど、感じるんだよ――」


「卵焼きとか、カレーとか、お母さんの味っていうの――やっぱりね、そういうのに憧れるよ――」