決意の込められた、ステッキさんの力強い宣誓――。
『魔法遺伝子覚醒を開始しますか――』
アナウンスが告げ、ディスプレイが、「はい」、「いいえ」の二択画面に切り替わる――。
戸惑うものと構えていたりおんだったが、すんなりと右手が画面に伸びてゆき、りおんの本能が集約された指先が、「はい」を選択し、タップした――。
『両手でステッキをしっかり握ってください――』
りおんはステッキさんを力強く握る――。
『脈拍数、心拍数、正常値――脳波、安定値――』
握った部分が発光し、手のひらからりおんの全てが明らかにされ、計測された数値がディスプレイに示される――。
『体内スキャン――異常なし――』
『魔法遺伝子覚醒促進剤――投与開始――』
発光部が別の色調に変化し、輝きを増す――部屋の灯りが不思議と消えた――。
促進剤といっても、液体でも錠剤でもない――痛さも感じない――全ては、握った手のひらを介して粛々と行われ、「魔法」というくくりで納得しろ――ステッキさんならそう言うだろうなと、瞼を閉じているりおんは意識の中で笑った――。