「いやぁ、そんな怖い顔をされてもですね――」


当たり障りのない言葉で、場を取り繕う――。



「ブラックなんだ――」


「へ――」


「ブラック企業なんでしょ――言葉巧みに魔法少女になれるよなんて甘い誘いにうっかり契約したら最後、早朝出勤、深夜残業、セクハラ、パワハラのオンパレード――」


「い、いやぁそれは――」



「辞めるなんて口にしようものなら、脅し、暴力で精神的に追い詰めて、気力を失わせてボロ雑巾みたいにコキ使う――」


「――――」


「あっ――はああああっ――」


汚いものを避ける様にステッキさんを放り投げ、何かに勘づいたりおんは驚き、口元を両手で塞ぐ――。




「売り飛ばされるんだわ――そんな、辞めるって騒ぐ女の子は何処かに幽閉されて、如何わしい人達にあんな事やこんな事されて屈辱的な人生を送り、一生を終えるんだわ――――そうでしょ、そうなんでしょ――――」




「うええぇぇん――」


絶望的に言い放ち、嗚咽し、マットレスに躰を投げ、そしてしなだれてみせるりおん――。


「いやいや、そんな事しないから――」


「ホントに――」