待って…待って…
私は何度もそう言ってあなたに手を伸ばした。
その手はその腕を掴むことはなかった。
こんな光景、実際に目にしたことなどない。
だけど私は何度も同じ夢を見る。
ああ今日もこの夢か。
苦しくて苦しくて耐え切れないような気持ちになる。
なのに何度も見ているせいか、冷静にその光景を見つめる自分もいる。
そして彼女はそのまま私のほうを振り向いて…
振り…向いて…
振り…向いた…っけ。
いつもと違う夢の展開に動揺が隠せない。
そういえば、いつも起きてから夢だって気づくのに、何でこんなにはっきり夢だってわかってるの。
「私を止めたい?」
そんな私をよそに彼女は私に問いかける。
「え…」
「止めたいなら、もう一度やり直す?」
意味がわからない。わからないけれど止めたい。あの時に戻って彼女を止められるならなんて何度考えただろう。
せめて何度も見るこの夢だけでも。
私は大きく息を吸って答える。
「止めたい。もしやり直せるなら、やり直して絶対止める」
「そう、じゃあその願い叶えてあげる」