「お帰り・・遅かったね?」

お母さんが見慣れないエプロン姿で
玄関まで迎えに来る。

「うん、今日は友達とパーティしてたから。」

私は靴を脱いで、
リビングへとトレンチコートを
脱ぎながら向かった。

「お母さんこそ早いね??」

私はお母さんにそういうと、
意外な答えが返ってきた。

「霞織が小さいころから帰るの遅くて、イヴの夜も一緒にいてあげられなかったからね、今日は早く帰ってきたのよ。」

毎年毎年、イヴの夜もクリスマスの夜も、
帰ってくるのが遅い母は、
私に悪いと思い、会社に無理を言って帰ってきたのだろう。
そう思った。

「ごめんね、電話してくれればよかったのに。」

私はテーブルの上に置かれた二人分の
料理を見て、そう言った。

「ご飯、もういらないよね?」

お母さんが寂しげに訊く。

「ううん、あんまり食べてこなかったから食べるね。ありがと。」

私は微笑んで、その晩は、母と貴重な
時間を過ごした。