それから各自帰りの準備を終え、解散。

あたしが帰ろうとした時には、夜の7時を回っていた。


「あ、勇河先輩!」

あたしは校門を出ようとしている勇河先輩に声をかけた。

勇河先輩、今日もひとりだ。

……また、自主練してたのかな。


「おー、杏。どーした?」

「昨日ね、友奈と電話したんだけど、今週末に会えるの、楽しみにしてたよ!」


ふたりで歩きながら、きのう友奈と電話した時のことを話した。

「おっ、まじで? いやー、最近会えてなかったし、俺もちょー楽しみ!」

本当に幸せそうな顔で話す勇河先輩。


その、友奈だけに向けられる笑顔が、痛かった。


あたしたちはたまにこうしてふたりで帰ることがあるけど、やっぱりあたしと勇河先輩の関係は、昔から変わらない。


友達以上、幼なじみ。


これ以上の関係になりたいと思う一方で、この関係を壊したくないという思いがある。



どんな時だって、一歩勇気が出せずに、諦めてきた。