「ばか…泣くなよ…」

いつもの意地悪な感じとは違う
弱々しい感じのひろの声。


ひろは、力強く私を抱き締めた。


「俺…あやのこと好きだよ…だから離れて行かないでよ…」


えっ…


泣い…てる?


いつも意地悪で弱味なんか見せないひろが


泣いてるの?


「ひろ…?」


私は抱き締められている状態でひろを見上げる


するとひろの目からは、次々と涙があふれている。


私は抱き締める力をぎゅっと強くした。


小さな体で精一杯力を込めた。


「私は…ひっ…ひろが…好き…です…」


今私の顔は、ぐちゃぐちゃ。


でもさよなら言わなきゃ。


「ひろの…1番になりたかった…こんなちっちゃい私がひろの隣に並んで不釣り合いなのはわかる…あの人…みたいに…ひろの釣り合う人になりたかったよ…今までありがとう…別れよう…」


どさっ


鞄がおちた。


「あや…誰のこと言ってる?」


私の鞄をゆっくり拾いながら言った。


「公園で…会ったあの女の人…」


あの人の方がよっぽどお似合い。身長高いし、スタイルいいし美人だし。


それに引き換え私は…ちびだし、すぐ倒れるし…可愛くないし…


あの人のがお似合いだよ。



「あや。違うんだ。あの人は…俺の…」


聞きたくない。


彼女なんだ


でしょ?


私は遮るように抱き締められていた体をゆっくり離した。


「今までほんとにありがとう…じゃあね。」


泣きながら微笑み、その場から逃げ出した。


「………………………」

















「鞄忘れてるよー!!!!」



と言うひろの声など全く聞こえなかった。



そして泣きながら


「最後までどじなやつ…」


と呟いたことも知らない。