そう、生温かいものの正体は犬。
犬が呉汰の頬をベロベロなめていたのだ。

「うわ、犬くっせー!!」

「ごめんなさい。
 この子あなたに何かしませんでした?
 迷惑おかけしました?」
犬の飼い主である女の子があわててやってきた。
「イエ、別に何も迷惑は…」
朝の犬の散歩だからかジャージで眼鏡をかけた女の子だった。
どこかの極道の先生のようだ。
犬は呉汰にじゃれまくる。

「珍しい、神楽坂がはじめての人になついてる」
犬の名は神楽坂という。
犬・神楽んは呉汰に乗り出し顔がベロベロなめなくっていた。

「あなた、何か悩んでない?」
眼鏡娘が呉汰の顔をのぞきこんで言ってきた。
「え?」