生温かく、くすぐったいものが呉汰の頬にあたる。


呉汰は父 向汰から逃げ出して知らない道を走った。
夜も遅く、真っ暗な道をずっと真っすぐ走った。
日が昇りそうになって、呉汰も疲れた。
知らない公園に入り、ベンチに座り込む。
携帯もお金も何も持っていなかった。
「何やってんだか…。
 何がしたいんだか…」
そういって、呉汰はベンチに横たわり、目をつぶる。
眠りについたのだ。


そして、生温かいものの正体は…。

「神楽坂(かぐらざか)!!」
呉汰は頬の触感の気持ち悪さに起き上がる。
呉汰の目の前は、知らぬ公園。
太陽も昇ってポカポカしていた。
そして、呉汰をジーっと見る…。


「…犬?」