呉汰はふと思った。

数十年後、呉汰に息子がいて、その息子に。
『俺、情けないだろ』的笑顔を見せる。

呉汰は思う、それだけはしたくない。
でも、このまま生きていたら父と同じことを繰り返してしまう。


それは嫌だ。
息子のみじめさ。
情けない父を見たくなかった。

「父さんは借金して、どうして何もやらないんだよ。
 母さんばっかり仕事させて、
 どうして父さんは仕事してないんだよ」

呉汰はまたこの話を蒸し返していた。

情けないこと言ってしまう父が許せなかった。

そして、家を出なくてはならなくなったことショックだった。


「母さんばかりにやらせていたわけじゃない。
 父さんも新しい仕事を探していたよ」


呉汰は知っていた。
父 向汰が昼間、公園にいたことを…。
まるでリストラされたサラリーマンのようだった。

「父さんだって驚いているんだ。
 借金の肩代わりした友だちっていうのが、
 根が優しくて頑張り屋で必ず自分が何とかするって言ったから。
 父さんはそれを信じていたんだ。
 まさか、逃げるようなまねするなんて思ってなかったから。
 ショックなんだ」
父 向汰も混乱しているようだった。