逃げることは簡単だ。

その場を離れてしまえばいい。

その思いを必死に消せばいい。

考えなければいい。

呉汰は逃げている。


湯島の夢のことをうらやましく思ったこと。
絵利ちゃんと湯島の関係に嫉妬したこと。
日々のイライラを江北くんにぶつけてしまったこと。
湯島に怒ったこと。
親の借金でうまいこと逃げることが出来た。
けど、結構落ち込んだりした。
バカみたいな自分が嫌だった。
それをバスジャック未遂事件とか。
火事事件とかで呉汰は目をそらしていた。
逃げていた。


自分の気持ちに…。



向き合うことが恐かった。


ちゃんとした人間でない自分を認めたくなかった。


そして、今回は自分の足で逃げているのだ。