その女の子は呉汰と目が合いにっこりと元気に笑う。

「これが呉汰」
朗君が呉汰を紹介した。
「あ、本町 呉汰です」
呉汰は頭をペコリと下げた。

「呉汰、こちら初花」
「初花です。これからよろしく」
初花ちゃんと呉汰に手をさし出し、二人は握手する。

「初花は、俺の婚約者だ」
呉汰はびっくりして口が開く。
男らしい、女に興味なんてないと朗君のことを勝手に思っていた呉汰。

「ハイ、婚約指輪で~す」

左手の薬指を初花ちゃんは満遍の笑みで見せびらかす。

「給料3か月分だ」
朗君が頬を赤めて言う。

「あ、そう」
呉汰から元気が見事になくなった。

「式はまだ、決めてないんだ」
「けど、もう届けは出したもんねぇ~」
イチャつく新婚 朗君アンド初花。

何か呉汰ってこんなんばかり…。

周りはイチャついていて、それを見てるのが多くねぇ?
一人ぼっちだね、可愛そうだわ。
本当に可愛そう。
呉汰…失恋したばっかりで、
親は借金まみれ、
嗚呼、可愛そう。
「しょせん、作者の上は他人事だよな」
呉汰、この物語りの作者 上に対し愚痴を言う。

「ん?なにか言った?」
朗君は呉汰の無意味な一人言を聞く。

「いや、なんでもない
 良かったな、朗君幸せそうだな」
呉汰は喜ぶ、少し負け惜しみもあるが…。