「っーか、なんでお前ら普通なんだよ。
 これ見えない?包丁!!
 バスジャックしてんの俺!!
 もっと恐がるか驚いてよ~」

犯人天王は半べそをかきながら叫ぶ。

みっともない大人の代表である。

「……」
言葉のない呉汰。

子供のように泣く大人は醜い。

「なんだってこんなことするんだ。
 お前は?」

月島は上からの目線で犯人天王に聞いた。

「…え。それは、あれですよ。」

犯人天王は気が小さく、怒鳴られ自己主張が出来なくなっていた。
声が小さくなり、はっきりしない。
呉汰はなぜか自分を見ているようになって嫌気がさした。

「はっきりしろよ。」

呉汰はイライラしてしまった。
呉汰はなぜか自分と重ねてしまった。

好きだった人に何も言えずにいた自分。

話したいのに何を話していいのか分からず、無視してしまった…。

数日前を思い出してしまった。