一人の人生に疲れ果てたおじさんが乗ってきた。

「オイ、バスを停めんじゃねぇ。」

そのおじさんは大声を出し、女運転手に刃物を見せつけた。

「キャー」
若い母親が叫ぶ。

「うるせー、キャーキャー騒ぐんじゃねぇ。
 刺し殺すぞ。」

若い母親は子供を強く抱きしめる。
買い物袋を持ったおばさんも呉汰も今おかれている状態を理解出来ていなかった。
オロオロする呉汰。
犯人もキョロキョロし、落ち着きがない。

「チィ。」
舌打ちする女運転手 神田 月島(かんだ つきしま)。

「あぁ?」
舌打ちに怒りを表す犯人 天王 入谷(てんのう いりや)

「どうして、このバスで。
 私が運転しているこのバスで、こんなことするわけ?」

刃物持っている犯人に大きな声で挑発的な独り言。

「うるせー、殺すぞ。こらぁ。」
犯人天王は女運転手月島に刃物を近づけた。

「…そんなん、邪魔じゃ!!運転が狂って逆に殺してやろうか?」

月島は強く、ちょっと怖かった。

言葉が悪かった。

犯人も元々気が小さいのか、ちょっとビクついていた。