「呉くん? 湯島くん??」
二人のケンカを聞きつけた絵利ちゃんがやってきた。
よ、弱すぎる男呉汰、倒れこんでいる。
切なくて…いても立ってもいられなくって呉汰はその場から逃げ出した。
呉汰は絵利ちゃんの顔をちらりと見た。
びっくりしていた。
そして、湯島の方しか見ていなかった。
怪我したのは呉汰なのに…心配の眼差しすらなかった。
「湯島くん、何があったの?」
絵利ちゃんは湯島に近づく。
湯島は呉汰を殴ったこぶしを見つめてた。
「あいつ…ちゃんと言えよな。」
湯島には呉汰の気持ちが理解できたのだ。
どうすることもできない、もどかしいものが伝わってきたのだ。
「え?何!?」
絵利ちゃんには分からないこと。
「友だちなのにね。」
湯島は絵利ちゃんに微笑む。