「あれじゃねぇ。女いねーから、欲求不満なんだよ。
 ふっ、ふられちまったんじゃねー!?」

湯島は呉汰にばっちり聞えるように大きい声で言った。
呉汰はキレました。

(誰のせいで…こんなイライラしてると思ってるんだ。)
呉汰は心の中で叫んだ。

そして湯島に近づく。
「おい、今何て言った?」
「ハァ、怒っちゃったの~?バカにしただけだよ。」
呉汰は湯島の胸ぐらをつかんだ。

「何だよ。」
湯島は呉汰に聞いた。
呉汰は何も言わなかった。

呉汰は葛藤していた…。
このまま、湯島に一気に言ってしまおうか…
言ってしまったら湯島は友達を辞めてしまうだろうか…。
友人として湯島を大好きな呉汰は悩んでいた。

湯島の胸ぐらをつかみながらじーっと自分の手を見つめていた呉汰。
何もしない呉汰、湯島は呉汰を思いっきり殴った。
呉汰は激しくスッ転んだ。

(何で殴られなくっちゃいけないんだ、ちくしょう)

「何で、お前なんだよ。」
呉汰は口が切れてしまった。
口から血が出ている。
血を手の甲で拭いながら、小さな声で呉汰は言った。

湯島は問う。
「何だって?」

小さ過ぎる呉汰の言葉を聴こうとした。

「何でお前ばっかり、全部持ってんだよ。
 自分では、何にもしてないのにくせに。
 なんでそんなに運があるんだよ。
 どうして、絵利はお前なんだよ。」

呉汰の心には、それが一番面白くないのだ。

友人、湯島を失ってもいいと湯島に殴られ思ってしまった呉汰だった。
どうしても腹の虫がおさまらない。

好きだった絵利ちゃん。
その絵利ちゃんの好きな奴が憧れの湯島。
呉汰には告白することもできない、簡単には消えることのない想い。
どう、発散すればいいのかわからない。
呉汰の腹はイライラしてしまう。

「ハァ!??」
湯島には意味の分からないことだ。