ある日のこと

湯島は話し出したのだ。

「俺、モデルになりたいんだ。」

「湯島にぴったりだな。それ。」

放課後、教室で残っていた二人。

湯島が女子からもらった手作り、
さつまいものクッキーを手に話していた。

「だろう?俺も目立つし、かっこいいじゃん。モデル。
 俺なら出来ると思うし…。」

湯島は自分の容姿に自信があった。

悪びれもせず、自慢する湯島であった。

「何か問題あるのか?」

けれど、湯島は元気がなく落ち込んでいるように見えた。

呉汰は心配する。

自慢する湯島を少し、
イラつきを覚えていてもその気持ちを無視し流して心配した。

「うん、親がさ、半人前のお前には無理だって。
 モデルをどんなイメージしてんのか…分かんないけど、
 チャラチャラしたことはしないでって、母さんが泣くんだよ。
 ちゃんとした仕事に就けってさ…。
 ちゃんとした仕事ってどんなんだよって言いたかったけど…
 泣かれちゃ何もできなかったし、言えないし、
 ムカついたから家出しようかと思ったけど、
 家を出て行くこともできなくってさ。」

湯島はいつも元気で明るく、笑顔が絶えない。

けれど、今は思いっきり落ち込んでいる。

呉汰はそんな湯島が可愛そうに思えてきてしまった。