「いや~昼だね、コンビニ。
 すげー混んでてさ。これしか買えなかった。」

菓子パンを手に微笑んだ湯島。

呉汰はその笑みに目を奪われてしまった。
人を幸せにする湯島の笑顔だ。

「本町くんの弁当美味そうだね。」
呉汰は湯島がほしがった卵焼きをあげた。
「うんまい、本町くんのお母さんは料理上手だね。」
湯島は嬉しそうに笑う。
呉汰はまた湯島に目を奪われた。

「…これ、俺が作ったんだ。」
呉汰は弁当を自分で作っていた。

「マジでぇ~すごい、すごい!!やべ~尊敬。」
湯島は呉汰をほめ、尊敬の眼差しで見ていた。
呉汰は卵焼きが大の得意であった。

今日のは、ひじき入り卵焼きであった。
時々黒ゴマやほうれん草を細かく切って卵と一緒に焼いたりする。
得意の卵焼きを褒められ、呉汰は嬉しくなっていた。
こんなに喜ばれ、尊敬されるなんて思っていなかったからだ。

「マジ美味いよ。天才だね。」
湯島はモリモリお弁当を食べていた。
呉汰は喜びに酔っていた。

「いや~それほどでもないけど…。」
呉汰はお弁当を食べようと思ったが…。
「ハイ、ごちそう様でした。」
湯島が見事に全て平らげた後だった。

「え?全部食べたの??」
呉汰が問う。
そして、湯島は笑顔で答えたのだ。

「うん、美味しかった。特に魚の照り焼き。
 卵焼きもおいしかったけど、魚が一番!!
 で、肉があるともっといいかも。」
湯島はお弁当の感想を言い出した。

呉汰のお昼ごはんはなくなった。
「あ、本町くんの分なくなっちゃったよね。ごめん。
 あまりに美味しくて止まんなかった。お詫びにこれを」
湯島はさっきコンビニで買ってきた菓子パンを差し出した。

「あ、有り難う。」
呉汰は仕方なく、そんな食べたくもないパンを受け取った。