「あ~のどかわいた」

自動販売機を見つけ、呉汰はかけよる。

「あ、俺のもよろしく」

湯島は調子よく言う。

呉汰は財布をズボンの後ろポケットから、
出そうと手を突っ込んだ。

「あれ?」

なかった。

左右二つのポケットを確かめた。

財布がない。

前のポケットも、ジャケットのポケットも、
カバンの中…どこにもなかった。

呉汰にはクセがあった。

着替えたらすぐにズボンのポケットに財布をいれることだ。

今日も朝、急いでるからといってもやっていた。

覚えがあるのだ。

「財布なくした…」

呉汰は呆然となる。