獅子王は叫ぶ。

「確かに乙女の言う事は美徳かも知れぬ。だがその美徳にそそのかされ、多くの兵が死んでいくのだ。それを知っていながら、乙女は尚も綺麗事を口にする!それが罪でなくてなんだ!?」

「たわけ」

俺は獅子王の言葉を一蹴した。

「わかりきった事を言って勝ち誇ったような顔をするな」

「何…?」

獅子王が俺を再び睨む。

俺はそれを涼しい顔で受け流した。

「いいか獅子王。乙女は無知なのではない。夢見がちな馬鹿な女ではあるがな」

乙女の方を見ながら俺は言う。

「こいつは己の理想がどれだけの犠牲を払うのか、とっくに理解している」

「ならば何故戦を続ける!!兵士の死を悲しむくらいならば、戦いなどやめればよいではないか!それを己の復讐の為に兵を駆り立てて…」

「民衆が圧制を受けるのがわかっていながら兵士の死を恐れ、白旗を振って大国の軍門に下ればよかったか?乙女の小国は侵略を受けたのだぞ?貴様は侵略に屈する王なのか?」

俺の言葉で、獅子王はまたもたじろく。

「貴様は乙女の事を何も知らぬまま、狭い物の見方だけで乙女を語り、断罪した。むしろ無知なのは貴様の方だ、獅子王」