地鳴りが聞こえた。

…いや、違う。

これは地鳴りではない。

人の咆哮。

軍勢同士がぶつかり合う声だ。

嫌な予感がよぎる。

俺は乙女を背にしたまま、小塔を駆け下りた。

…外の様子がよく見える場所まで出ると。

「…何という事だ」

眼下には、恐れていた事態が広がっていた。

獅子の国の獅子王軍八十万と、女神国以下同盟軍五十万。

その両軍が激突しているのだ。

…流石に数の差は圧倒的だ。

戦闘開始早々から、獅子王軍が同盟軍を押している。

三十万もの差があるのだ。

最早この数の差は、個人個人の技量で詰められるものではない。

刃と刃がぶつかる音。

怒声、鍔鳴り、甲冑と甲冑の激突、馬の蹄の音、悲鳴、断末魔…。

様々な声、音が入り混じる戦場。

しかし、そんな事よりも憂うべきは、ここで激突する両軍が、本来ならば友軍同士という事だった。