王宮のテラスから眼下を見下ろす。

大地を埋め尽くすかのような軍勢。

女神国以下、五つの国の軍総勢五十万。

まさしく大軍だった。

「何事だ。全軍率いての進軍とは穏やかではないな」

俺は不敵な笑みを浮かべて言う。

「まるで我が国に侵攻してきたかのようだが?」

「場合によってはそうなる」

あのエメラルドの甲冑は女神国の女神兵、だったか。

軍を率いている仮の指揮官らしき騎士が、俺に向かって生意気な口をきいた。

「乙女はどこへ行った。すぐに我らの前に姿を見せてもらおう」

「言っている事がわからんな」

俺は嘲笑う。

「使者に伝言を預けた筈だ。乙女は東方同盟の全権を俺に委譲し、その足で西方へと向かった。同じように同盟を結ぶ為にな」

「ふざけるな!!」

「子供騙しな!!」

兵士達が口々に叫ぶ。

「そのような世迷言、我らは認めぬ。乙女は我々に直接の言葉もなく、国を空けるような事はしない」

指揮官が真っ直ぐ見据えて言った。