だが、それは乙女だけが責められる謂れのない罪。

俺も、兵士も、騎士も、他の王も、そして獅子王自身でさえも。

一度でも戦場に立った事があるのならば、身に覚えのある筈の罪だった。

己の正義を振りかざし、己の都合で敵を斬る。

己の大義を振りかざし、己の都合で兵士を導く。

戦場に立つ者ならば等しく抱える罪だった。

だから兵士は兵士を断罪しない。

全ての兵士は罪人なのだ。

獅子王もまた、王である限り乙女や俺と同じ罪の十字架を背負っている。

にもかかわらず、奴が乙女を断罪したのは…。

「おのれ、獅子王…」

歯噛みし過ぎて唇が切れ、口元を血が伝った。

奴はこの場で百度殺しても尚足りぬ。

しかし、今は乙女の体と心の方が心配だった。

早く女神国に戻り、医者に診せてやらなくてはならない。

…冷え切った乙女の軽い体を背負い、俺は部屋を出た。

頼む、もう少し。

もう少しだけ堪えてくれ、乙女。

もうお前は、自分を責める必要はないのだ。