音がする。

鉄扉の錠が外される音。

最早何の反応も示さなかった筈の体がビクリと動いた。

…獅子王が来たのだろうか。

また、私を責め立てに。

恐ろしくて顔を上げられない。

否。

顔を上げる力など、もう私には残されていなかった。

扉が開き、誰かが部屋に入ってくる。

「乙女!」

誰かが私を呼ぶ。

…私は、血で汚れた石造りの床に視線を落としたまま。

もう反応できない。

…己の精神世界に閉じこもったままだった。

「じっとしていろ、すぐに自由にしてやる」

誰かが私の両手を封じている鎖を外し、戒めから解放してくれた。

…全体重を支えていた肩に、ゆっくりと血が巡り始めるような感覚。

肩の痛みが幾分和らぐ。

…だが痛い。

肩よりも、心が痛かった。