命までは奪わなかった。

兵士を気絶させた後、俺は彼の持っていた部屋の扉の鍵を取り上げる。

これで何とか乙女を助け出せる。

潜入、救出任務は成功という訳だ。

なのに。

「……」

これだけ扉の前で派手に騒いだというのに、部屋の中から乙女の声がしない。

あいつの性格上、助けが来れば『助けが遅い』などと憎まれ口のひとつも叩きそうなものなのだが。

…胸に一抹の不安がよぎる。

何かが俺の耳元で囁くのだ。

既に手遅れだったのではないか、と。

…ともかく、早くこの扉を開けよう。

こんな陰気臭い場所からは、俺も早々に退場したい。

俺は扉の鍵穴に鍵を差し込んだ。