確かに、斬った。

だが、私が手にかけたのは向かってくる者だけだ。

投降してくる者、背を向ける者、戦意を失った者に刃を向けた事はなかったし、出来る限り戦をおさめようと、敵兵に投降をすすめる事もした。

決して、好んで兵士を斬った訳では…。

「それで、己の罪が軽くなるとでも言うのか?情状酌量の余地があるとでも?」

獅子王の言葉に、私は押し黙る。

「殺すつもりはありませんでした、とでも言うのか?戦になれば必ず兵士は傷つく。死ぬ事も珍しくはない。貴様とて予想もつかなかった訳ではあるまい。十分に予期できた事態だ。にもかかわらず、貴様は敵兵を斬り、あまつさえ自軍の兵士さえ死地に赴かせた。死ぬかもしれない事がわかっていながら」

「そ、それは…!!」

私だって万能ではない。

たった一人で敵に勝つ事などできぬ。

皆の助けが必要なのだ。

「必要だから利用したのか。兵士を駒として敵軍にぶつけ、兵士の命を囮とする間に己の目的を果たすのか」

獅子王の言葉が次々と胸に突き刺さる。

「それで勝ち得た手柄を我が物のように語り、武勇を隣国に轟かせたか。ついた二つ名が戦乙女…成程、言い得て妙だ」

彼はニヤリと笑う。

「血にまみれた殺戮の女神。まさにお前にぴったりの二つ名だ」