寒い。

どんなに体を強張らせても、ガチガチと震えてしまう。

奥歯が小刻みに音を立てる。

天井から吊るされた鉛色の鎖で両手を繋がれて、全体重を支えている。

足は床に届いていない。

肩が外れそうなほど痛かった。

…そんな痛みの中でも、疲労が蓄積すれば睡魔が襲ってくる。

なのに、眠りに落ちようとする寸前で何度も起こされる。

この真冬に桶いっぱいの氷水を頭から浴びせられるのだ。

心臓が停止しそうなほどの冷たさ。

それだけでも辛いというのに、鉄格子だけの窓から吹き込んでくる北風が、私のびしょ濡れのドレスを更に凍てつかせた。

事実、ドレスは霜が降りたように白くなり、身じろぐとパリパリと音を立てた。

寒さと肩の痛み。

それでもまた眠りに落ちそうになる。

…眠りそうになるのが怖かった。

眠りそうになる度に。

「起きろ」

また桶いっぱいの氷水を浴びせられるからだ。

「がはっ!…ごほっ、ごほっ…」

気管に水が入り、咳き込んでいると。

「ご機嫌いかがかな、乙女」

目の前で獅子王がにやついていた。