あの女の幽閉されている部屋は鉄格子があるだけで吹きさらしだ。

この時期の風は凍えるほどだ。

加えて何度も氷水を浴びせられている。

体温を急激に奪われ、まともな思考もできずにいるに違いない。

「そろそろ頃合いか」

俺は部屋の鉄扉を見た。

…奴本人にも言った事だが。

綺麗事や理想をかざし、いつまでも穢れ無きままでいようとする。

俺は奴の考え方が気に入らない。

戦とは殺し合いだ。

そんな殺し合いに矛盾した精神論を持ち込み、己の正義を主張する。

甘っちょろい夢を捨てる事なく、清らかなままでいようとする。

やっている事は己の敵である者達と同じ、殺戮であるにもかかわらずだ。

そんなあの女を見ると、たまらなく穢してやりたくなる。

奴の理想論を全て打ち砕き、抱えている幻想を剥ぎ取り、現実の刃をその身に突き立ててやりたくなる。

気高くいようとするあの女を、お前も所詮は血塗られた存在なのだと追い詰めてやりたくなる。

奴の理想は虫唾が走る。

夢物語ばかり口にしおって…!!