逃げるように去っていった使者を見送った後、俺は目を閉じて黙考する。

「どうされるおつもりですか、紅様」

「もしや、乙女の身に何か良からぬ事が…」

兵や大臣が口々に呟いている。

「そのもしや、だろうな」

俺は目を開いた。

失策だった。

乙女を引っぱたいてでも、同行するべきだった。

俺は自分の甘さに歯噛みする。

「…俺と乙女が不在にしてもやっていけるか?」

俺はそばにいた兵士に言う。

「それでは…!!」

俺の言葉の意味を察したように、兵士が晴れやかな表情を見せた。

「…数日中には戻る。乙女と…できれば吉報も携えてな」

そう言い残し、俺は足早に玉座の間を後にした。

獅子王め。

何を企んでいるかは知らぬが、貴様の浅知恵などとうに見切っている。

手を出した相手が悪かったな。

俺は愛用の魔槍を握る手に力を込めた。