獅子王の腕を振りほどこうとするが、びくともしない。

「その統率力に加えて可憐さ、美貌…国の象徴としても素晴らしいし、その身を自由にできる事は、男としても征服欲を満たされる…」

獅子王は私の体を引き寄せた。

「お前はわかっておらぬのだ。甲冑などよりもドレス…ドレスよりも、一糸纏わぬ姿の方が、お前の美しさは引き立つ」

「黙れ!!」

空いていたもう片方の手で、私は獅子王の顔を握り拳で殴りつけた!!

それでも。

「力ずくというのは嫌いでな」

獅子王は涼しい顔をしていた。

「国を挙げてまで女神国を陥落させ、貴様を奪い取るというのは少々気が乗らなかった。そう思っていた矢先の、貴様からの同盟話だ。これは使えると思った。案の定貴様は俺を説得しようとノコノコここまでやって来た。信義の証のつもりか知らぬが、あの腕利きの紅まで置いてくる馬鹿正直ぶりでな」

臭い息を吐きかけながら獅子王は笑う。

「その頭の悪さ加減と夢見がちな性格は矯正でもすれば何とかなるだろう…乙女、望み通り同盟も結ぶし、女神国も守ってやる…お前の身ひとつでな。安いものだろう?」

「ぐ…!!」

獅子王の腕の中で、締め付けが強くなる。

息苦しくなり、意識が朦朧とする。

いかん、逃げなければ…。

逃げ…。

「くれ…な…」











最後に浮かんだのは紅の無表情。

そこから先は、もう覚えていなかった。