その言葉に、部屋にいた全ての者が注目した。

…呟いたのは一人の王だった。

筋骨隆々とした、四十代くらいの王。

朱色の軍服に、黒い外套。

外套の背には、獅子を模した紋章が描かれている。

そしてその紋章こそが、そのまま彼の二つ名と彼の国の名を表していた。

獅子の国の獅子王。

この近隣で唯一、八十万という大軍を持つ超大国の王だ。

その二つ名の由来は、まさしく獅子奮迅の戦いぶりを見せる事から。

彼自身、相当な武術の使い手であると聞く。

厳めしい彫りの深い顔に、口髭、顎鬚(あごひげ)をたくわえ、その眼光たるや、終始和やかな雰囲気だった会合をひと睨みで凍りつかせた。

「茶番とはどういう意味だ、獅子王」

「どうもこうも言葉通りだ」

獅子王は鼻でせせら笑う。

「同盟などと…皆で助け合おうなどと聞こえはいいが、乙女…貴様が音頭を取った時点で、この同盟は貴様の傘下に入る事を意味するのではないか?」

「ち、違う!そのような事は断じて!戦乙女の名に賭けて…」

「そもそも」

獅子王はギロリと私を睨んだ。

「その戦乙女とかいう二つ名で呼ばれていい気になっている事自体、俺は貴様が気に入らぬ」