小難しい事は苦手だ。

ただ、お互い協力し合いたい。

もし攻め込まれた時は助けを求め、助けの手を差し伸べられた時は迷わず掴んでやりたい。

その為の同盟を結びたい。

書状というのは得意ではなく、そんな子供の書く文のようなものを使者に持たせた。

…三日後に、女神国で詳しい話をしたい。

その呼びかけに、五つの国の王は皆応えてくれた。

軍議の間の円卓を囲み、五人の王が一堂に会する。

ほんの一年前では考えられなかった状況だ。

近隣国全てが牽制し合い、いつ寝首を掻き切られるかわからぬ日々に震えて過ごしていた。

だが、小国が大国に勝利したあの日から、どんどん状況は好転していく。

…私は背後に立つ、赤い外套の護衛を心から頼もしく思った。

貴方は本当に、加護をもたらす風なのかもな。

「…用件は、先日使者に持たせた書状の通りだ」

立ち上がり、私は五人の王に言う。

「損得勘定なしにいきたい。いずれはどの国にも等しく脅威が訪れる。西方での戦乱の話は、貴方がたも知っての通りだろう。最早近隣国同士がいがみ合っている時ではない」

私は王達を見渡した。

「私に従って欲しいのではない。誰が上という訳でもない。平等の関係として、良き隣人として、同盟を結びたい。ただ助け合う関係でいたいのだ」