ひとしきり帰還を喜んだ後、乙女は玉座に座する。

その時には既に女王の顔だった。

「さて…まずは報告を聞かせてもらいたい。どうだったのだ?西方の様子は」

「…酷いものだ」

俺は見た事全てを乙女に語って聞かせた。

人が修羅と化し、同じ人を虫けらのように殺してまわる惨状。

…乙女の可憐な表情が次第に曇っていく。

「そうか…それほどまでに」

一通りの報告を聞き終え、乙女は暗く沈んだ顔で呟いた。

「何故人は争いをやめぬのだ…何故共に手を取り合って暮らせぬ…何故数多くの犠牲を払ってまで上に立とうとする…」

「お前のように頂点に興味を持たぬ者ばかりではないのだ、人間という奴はな」

俺は静かに目を閉じた。

「領土、富、名声…それらの欲に加え、復讐、憎悪などの感情も絡み合い、複雑な状況で人同士が争う。人間もまた、本能の生き物なのだ」

「……」

俺の言葉に、乙女は納得いかなげに床を見つめた。

「何にせよ…西方での争いに決着がつけば、今度はこの東の地にも再び戦乱の嵐が吹き荒れるだろう」

乙女は俺と同じ結論に達する。

「何とかせねばならないな…」