「う~ん…何て言えばいいか…」
薫は言葉を探している様子だ。

昔からズバズバと当たった薫のカン。
実際、里美に出ていかれて竜太郎にいま一つ元気がないのだから、今回も充分当たっていると言える。
ただ問題は6年前のことという点だ。

「なんか…目に輝きが無いっていう感じかな」
薫は首を傾げながら言う。

「それ、いまも6年前もってことかい?」

「うん、そう」

「それはしょうがないんじゃないか。高校ん時からもう30年近く経ってんだ。誰だってそうなるさ」

「そうじゃなくて…なんか目標がないっていうか…」

「昇進間近でイケイケだったのにか?」

「でなきゃ、目標がもっと違うところにあったとか…」

「目標が違う?」

「あ、でもやっぱりうまく説明できない。ホントごめんね、ヘンなことばっか言って。余り気にしないでね」



一時間ほどで二人は喫茶店を出て、その場で別れた。

竜太郎は雑踏の中をウロウロしながら、先ほど薫が言ったことを考える。



“目標が違う”とはどういうことなんだろうか?
会社員でいることが本来の道ではなかったってことなのか?
やはり俺の取るべき道はラーメン屋ってことか?