「えぇっ!そうだったのか」

「それに毎月、幾らかのお金を送ってきてたんだ。まあ大したタシにゃならなかったけどね」

源太郎はバツが悪そうに無言で俯いている。

相変わらずTV画面に目を向けたまま、幸子は言い続ける。
「私ゃ何度も送るなって言ったんだけどね。この人意地っ張りだから全然聞きゃしないんだよ。まあ本人がそれで罪滅ぼしになるって満足してるんなら別にいいけどさ。だから私ゃ途中から何も言わなかったよ」

「なんだよ母さん、だったらなんで俺に話してくれなかったんだ?」

「だってしょうがないだろ。竜太郎には絶対に言うなって、この人が強く言うもんだから」

「まったく…俺だって父さんのことずっと心配してたってのに」

竜太郎は半ば呆れ返っていた。
しかしその反面、離れ離れでもこの二人は夫婦の絆をしっかり保っていたんだなと思い、なんだか嬉しい気持ちにもなっていた。

「すまねえな、竜太郎」
と源太郎が家に帰って初めて声を出す。

「そんなことは別にいいさ。それに父さん、謝るんなら俺にじゃないだろ」

「ん?あ、ああ、そうだな…」

源太郎は正座に座り直し、一つ咳払いをする。

「あ、あのよ…」