「だったら家に来れば?久しぶりなんだから母さんに顔見せてやれよ」
「バ、バカ言え!どのツラ下げてあいつに顔向けできるってんだ」
竜太郎の言葉に源太郎はしどろもどろだ。
すると竜太郎はフッと笑みを漏らす。
「何言ってんだよ、夫婦じゃないか」
「竜太郎、俺ぁ家出るとき離婚届置いてったんだぜ。覚えてるだろ、そんなこと。だからあいつとはもうとっくに夫婦じゃねえよ」
「離婚届ったって、役所に出してなきゃただの紙切れだろ」
「そ、そりゃ当たり前だ」
「母さんさ、離婚届まだ出してないんだ。あのままなんだよ。だからいまでも父さんと母さんは夫婦さ」
幸子は竜太郎が高校を卒業するまでは、敢えて離婚届を出さなかった。
学校への体裁も考えてのことで、それは竜太郎も承知していた。
しかし竜太郎が所帯を持つ際に確認したところ、戸籍の筆頭者がまだ源太郎のままだった。
それでも竜太郎は幸子に何も聞かずに黙っていた。
ひょっとして母さんはずっと父さんの帰りを待っているんじゃないだろうか、と思ったからだ。
そして昨年、ふとしたことから家でその離婚届を発見。
幸子の書くべきところは、やはり全て空欄であった。
「バ、バカ言え!どのツラ下げてあいつに顔向けできるってんだ」
竜太郎の言葉に源太郎はしどろもどろだ。
すると竜太郎はフッと笑みを漏らす。
「何言ってんだよ、夫婦じゃないか」
「竜太郎、俺ぁ家出るとき離婚届置いてったんだぜ。覚えてるだろ、そんなこと。だからあいつとはもうとっくに夫婦じゃねえよ」
「離婚届ったって、役所に出してなきゃただの紙切れだろ」
「そ、そりゃ当たり前だ」
「母さんさ、離婚届まだ出してないんだ。あのままなんだよ。だからいまでも父さんと母さんは夫婦さ」
幸子は竜太郎が高校を卒業するまでは、敢えて離婚届を出さなかった。
学校への体裁も考えてのことで、それは竜太郎も承知していた。
しかし竜太郎が所帯を持つ際に確認したところ、戸籍の筆頭者がまだ源太郎のままだった。
それでも竜太郎は幸子に何も聞かずに黙っていた。
ひょっとして母さんはずっと父さんの帰りを待っているんじゃないだろうか、と思ったからだ。
そして昨年、ふとしたことから家でその離婚届を発見。
幸子の書くべきところは、やはり全て空欄であった。