源太郎は無言になった。

老人は付け加えて言う。
「但しもし、途中で挫折するようなことがあったら、わしは即座にあんたからそのパワーを吸い取る」

源太郎はまだジッと考え込んだままだった。

しかしやがて、ようやく口を開く。
「息子のためにそこまでやれってんだな」

「そうじゃ。とにかくあんたはこれまで、自分だけの人生ばかりを考えて過ごして来たんじゃ。周りのことは殆どお構いなしでな。結果あんたは家族を捨て店を捨てた。全部あんた自身の身勝手なわがままじゃ。じゃからこれからは竜太郎君のために生きていくんじゃ。どうじゃ、できるか?」

源太郎は再び黙り込んだ。
頭の中に様々な思いが交錯する。

そして意を決した。
「わかったよ。やるよ、爺さん」

老人は頷いて言う。
「それでいい。その時期が来たら必ず何らかの方法で知らせよう。それまで待つんじゃ」

「それと爺さん、いま幸子や竜太郎がどうしてるか教えてほしいんだが」

「二人とも元気じゃ。あんたがいなくてもな。まあ二人のことは時々教えてあげよう。あんたもその方が安心してラーメン作りに打ち込めるじゃろ」

「助かるよ、爺さん。色々とすまんな」