30年前に家を出た源太郎は、ここから遠く離れた小さな町工場に勤務する。
工場勤めを選べば成功するってんならやってもらおうじゃねえか、と源太郎は半ばヤケ気味に働いた。

だが20年に渡るラーメン作りが体に染み込んでいる源太郎に、いまさら全く違う職種が馴染めるはずもなかった。
与えられた仕事がうまく出来ず、年下の上司にバカにされ、源太郎は爆発寸前であった。

そんなとき、彼の前にまたも三間坂老人が現れる。

老人は言った。
「あんたは道を誤った。いまさらジタバタしたってもう遅いんじゃ」

「なんだとこのジジイ。じゃあ一体どうすりゃいいってんだ。困ってたって何もしてくれねえってのによ。少しはまともにアドバイスくらいしてみろってんだ」

「相変わらず口の悪い男じゃのう。呆れるわい」

「なんだよ、結局は俺をバカにしに来ただけか。ならサッサと帰れ」

「完全に歯車が狂ってどうにもならんようじゃの。よいか、そんなときは原点に戻るんじゃ」

「原点？」

「そう、あんた自身が最初に決めた道を進むんじゃ。それしかない」

「へっ、またラーメン作りをやれってのか。成功しねえってわかってんのによ」