あてつけ?
ひどいよ、王子・・・
ニヤニヤしながら、見せつけるように肩を組む王子。
って言うか!!
今、優雅すごい発言したよね。
「初恋の人って?優雅って山田のお姉ちゃんのこと好きだったんだ!」
私は、乱暴にカーテンを閉め、秘密ノートを開く。
「うん。初恋かな。大人に見えたんだ。まだ俺子供だったし。まぁ、そのせいで悟と喧嘩しちゃったんだけどな。」
話が見えてきた。
私はさっき見た光景を忘れる為にも、秘密ノートに書き込むことに専念した。
『優雅の初恋の相手・・・喫煙女』
『優雅が喫煙女に惚れたことが原因で、山田と喧嘩』
遅刻ギリギリに教室に駆け込んできた亜沙子にそのノートを見せると、亜沙子は口を手で押さえて、目を丸くした。
そして、さっきの王子の行動を報告した。
「やっぱ、からかわれてるのかな、私って。」
カーテンを閉めたまま、ポツリとつぶやく私に亜沙子が言う。
「王子って意外にかわいいね。きっと、悔しかったんだよ。高校生相手に嫉妬しちゃってる自分に。昨日電話してきてくれたから私の中でポイント上がったよ!」
亜沙子は秘密ノートに赤のペンで、大きくハートを書いて、
その中に『陽菜 晴斗』って書いてくれた。
私は少しだけカーテンを開けて、市役所を見た。
もうそこには王子の姿も喫煙女の姿もなかった。