私は右頬を机にくっつけて、窓の外を見た。
役所で働く人々は、見ていて面白い。
ONとOFFがはっきりしてるんだ。
私は今日も、灰皿王子を探す。
4階で働く灰皿王子は、決まって3階から4階に登る階段の踊り場でタバコを吸う。
でも、彼は勤務中は超真面目。
『タバコなんて吸いません!』みたいなオーラを出して、テキパキと仕事をする。
「あ!!」
思わず声を出してしまった私にクラス中の視線が突き刺さる。
「ごめん・・・」
私は亜沙子の背中をシャーペンで突っついて、市役所の4階を指差した。
だって・・・
ピンクのネクタイしてるんだもん。
声も出るよね。
初めてじゃない?
もしかして今日デートなのかな。
灰皿王子は、窓際のコピー機の前で、ぐーっと背中を伸ばし、両手を高く上げて伸びをしていた。
「今、こっち見たよね。」
亜沙子が、灰皿王子に向かって手を振った。
「見えてるわけないよ。王子は目が悪いから・・・」